ゲラニウムの記事の中で紹介した、スゥエーデンの国境の町マルメにあったレストラン「Trio」のことも書いておこうと思います。

いま行けるわけではなく回想モードで恐縮ですが、シェフたちは新プロジェクトに向かっておられるそうですし、1年経っても記憶の鮮明なお店なのでお許しを。
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「Trio」の店名の由来は、シェフが3人であること。
厨房には他に助手はおらず、「マジで3人」でやっておられたようです。
3人とは、Ola Rudin、Sebastian Persson& Erik Berne。
http://chefs-talk.com/lists/tags/TRIO
http://bestemergingchefs.wordpress.com/2010/05/10/16-ola-rudin-sebastian-persson-trio-malmo-sweden/


あとは「4人目」ソムリエールのLinda Violago氏。
前年までMugaritzにいらっしゃいました。一度見たら忘れられない方なので、Mugaritzで働いておられた姿を記憶していました。
http://scoffier.wordpress.com/2010/08/11/blind-tasting-with-linda-violago-trio-restaurant-malmo/


私がTrioに伺ったのは2010年の夏でした。

nomaに行く予定が、5月、そろそろお店を予約しようかという直前、サンペレグリノの50レストランでnomaが世界1位になってしまい、しまったーと思った通り、その翌日から10万件の予約がnomaに殺到したらしいです。
もうちょっと早く、あと1年でも早く気づいて行っておけば良かった。。


ただ、せっかくコペンハーゲンに行くし(航空券もう買ってたし)、ノルディックモダンどこ行こう?という段になって、「億劫の細道」を書いておられるAQ氏ご夫妻が、コペンハーゲン近郊で「踊る私たち」マークを3つつけておられたここに行ってみようかということになったのでした。
逆にいうと、私はそれくらいの期待度しかありませんでした(知らないって恐ろしい)。いや、AQさんの文章から、ある程度の期待はありましたけども。


これまで食べてきた料理の印象が吹っ飛んでしまいました。
いや、知らないってホント恐ろしいっす。
(マルメはミシュランのカバーしていない地域なので、当然ここは無星です)


マルメは、コペンハーゲン駅から国鉄で30分、乗り換えなし1本で行けます。
上本町から近鉄1本で富雄に行くような感じですね(違)


マルメ駅下車。
駅近くの旧市街のようなたたずまい。良い感じです。
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良いお天気ならば、ぷらぷらとよそのお店やレストラン(ビアガーデンやテラスのカフェも多し)を冷やかしながら歩けば楽しそうな道でしたが、この日は雨で暗くて寒く、それどころではなかった…8月なのに。


でもお店に入った瞬間、ここは絶対美味しいという確信のようなものを感じました。
旧市街の中の路地にたたずむ、小振りな一軒家。
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木目をそのまま生かした素朴なインテリア。華美な装飾はありません。
でも客を迎える暖かさのある「空気感」がありました。


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ビーツと蝦。
しょっぱなから超絶技巧の火入れにのけぞる。
バレンシアでキケ(Quique Dacosta)の蝦をまだ食べてなかったので(今年やっと念願かないました。後日UPします)、日本以外の国で、こんな鮮度と火入れの蝦を食べられるとは思っていなかった衝撃の蝦。
赤ワインビネガーの酸味って蝦と合う。

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エルダーフラワーと鱈(たぶん)
これも食べた瞬間踊り出しそうな味のバランスと火入れ。僅かなビネガーとクロロフィルだったか、葉緑素の苦味。
これだけ生に近くて素材が良いと、ほんのわずかなアセゾネでNGとOKが大幅に振れるのだなと思う。これはその狭いストライクゾーンにどんぴしゃです。
凄い。
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人参の葉と実とトマト。
人参が鰹節のように薄いだけなのに全く新しい味になってました。

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ジャガイモ、マヨネーズ、マスタードにベーコンのかりかり
やっぱり色彩感覚が鋭いと味も高いレベルになるのか、野菜の質がこんなに高いのってなぜ?

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魚(これも鱈だったかな)にかかっていたブイヨンや、この豆の花と葉と実と温泉卵のバランス…なんというか、一皿ごとに踊るか「すげー」と叫んでいたような気が。
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行ってもう1年になるお店ですが、まだあの感覚を鮮明に思い出せます。

同じ色の食材はメニューとして組み合わせると味もまとめやすい
と言ったのは「アル・ケッチャーノ」の奥田シェフでしたが、それを地でいく料理でした。


Trioの彼らもインタビューなどで繰り返し述べていますが、「ローカルフードに目を向ける」と。
スゥエーデンやデンマークのこれらの店で出る野菜のみずみずしさは、ちょっと目を剥くような素晴らしさです。


水と土、はきっと影響あるでしょうね・・・。
コペンハーゲン近郊は、70年代は水質が非常に悪かったそうですが、今は、日本と同じで、水道水を普通に飲んでも差し支えない地域です。

フランス料理のミネラル感たっぷりの野菜のこくに慣れると、ここの野菜は味が繊細すぎてるかもしれませんが、日本人は味に親しさを感じるのではないかと思います。

2008年にオープンしたTrioは、2011年2月に突然閉店してしまいましたが、OlaとSebastianの二人は、新プロジェクトに向けて始動予定とのことです。


Trio restaurant(2011.2閉店)
Tegelgårdsgatan 5
211 33 Malmö, Sweden

http://www.triorestaurant.se/