2011年7月7日オープンの、まだ新しいお店です。
場所は六本木通りを進み、西麻布交差点手前北上、ラ・グラップの斜め前。

Fermintxo(フェルミンチョ)という店名は、パンプローナの守護聖人サン・フェルミン祭(牛追い祭で有名)が7月7日に行われますが、それにちなんだ修業時代の作元シェフ(1982年7月7日生まれ)の愛称からだそうです。

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お店はスペインバル風のカウンターとテーブル。
看板はバスク風です(シェフ曰く、「バスク文字に見えるように自分でデザインしました」とのこと)。

メニュー構成は、500円、800円のタパスと、1000円~5000円程度のその日のメニューのカルト主体。シェア基本のカジュアルな感じです。

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Bocqelones(イワシの酢漬け)
イワシの状態が素晴らしい

よっぽど新鮮でないとこの味は出せないかと。
あと内臓処理が早いんだと思う。この魚の鮮度と味はカタルーニャ沿岸でも普通のバルでは出せないと思う。
マリネ加減がきっちり決まってる。これで500円ですよ。たかが2切れと思ってはいかんです。
マリネには白ワインビネガーを使っているとのこと。「ほんとはシェリービネガーを使いたいんですが」。
シェリービネガーを使ったらこの値段で出せないものね。


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さんまのマリネの炙り焼き茄子とサマートリュフ
これは黒板メニューから。
1300円(写真はシェアで1/2量です!)でこんなに旨いのかー。塩とビネガーの使い方がうまい。トリュフの香りと、さんま+茄子+トリュフの食感も忘れがたい。

あとお薦めはトルティーヤ
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バスク風とスペイン風のどちらかを選ぶ。
バスク風を選ぶと、鱈が入ってます。
卵に鱈の組み合わせって、バスクではよく食べる組み合わせなんで個人的ににやにやしちゃいます。

スペインのバルに行くと、これは予め作ってあって、冷たい前菜扱いなんですが、ここのは出来たて。
やっぱりトルティーヤは出来たてが美味しいですね。

日本で真面目にスペインバルをやると、魚はお手頃価格でけっこうすごい領域までいくものなんだなと思いました。
スペインもカタルーニャやバスクは魚介類の美味しいことで有名ですが、星付きレストランなどを除いて、ここまで美味しいものにはなかなか出会えなかった。

サンセバスチャンの、いわしマリネで有名な某有名バルも、酢が強すぎて酢の味しかしなかったもんなぁ…あれは何酢で作っていたんだろうか。りんご酢?

龍吟の山本シェフがバルセロナに来て、市場で
「ここの魚は全部死んでる」
と言ったそうで(作元シェフ談)それもむべなるかな。
デニアのQuique Dacosta(キケ・ダコスタ)で出たガンバ(エビ)は、その新鮮さとひっくり返るような火入れで強烈な印象でしたが、作元シェフ曰く、

「そういうのは市場とか通してないでしょうね~。地元の業者と直取引じゃないと」

とのこと。デニアのエビは関アジ関サバのようなブランド魚介らしいですが、それでも魚介のクオリティは流通の速さがほんとにカギを握っているんだなと感じました。

作元慎哉シェフは、大阪の辻学園調理師学校卒業後、地元の石川でホテル勤務ののちスペインへ渡り、オンダリビアのAlameda(アラメダ・ミシュラン1つ星)、Fonda Sala(フォンダ・サラ)、Neichel(ネイチェル)、サンセローニのCan Fabes(カン ファベス・ミシュラン3つ星)で修業されたとのこと。


スペインを志した理由は、学校(辻学園調理師学校)にスペイン専科があり、

「素材と塩とオリーブオイルの単純な組み合わせでこんなに美味しくなるものかと思った」

イタリアを経由しないスペイン直行の方、久し振りに見ました。
辻学園にはスペイン料理の専門課程があるのね。(エル・ポニエンテの小西由企夫氏や函館「バスク」の深谷宏治氏も教授陣に名を連ねています)

作元氏の修行先Can Fabesといえば、El Bulliのフェラン・アドリアの料理を真っ向から批判したサンティ・サンタマリアがシェフだったお店。El Bulliについてシェフに水を向けてみると、

「フェラン・アドリアのところで修業した若い料理人たちが、フランス料理も作れないのに、あの最先端の料理を真似して最初からそちらに行こうとしている。それはちょっとどうなのか、と思っています」

確かに、あの最先端の料理も、もっとベーシックなスペインの郷土料理やフランス料理ができて初めて到達する域のはずで、El Bulliの料理界にもたらした影響としては、分子調理を世に広めた一人であること、チームで料理を作るスタイルを広めたことなどいろいろ言われていますが、弊害もやはり無いわけではないのかもしれません。

東京のスペインバルで、El Bulliのもたらしたものについて、はからずもいろいろと考えを巡らした一夜でした。

BAR RESTAURANTE FERMiNTXO[フェルミンチョ]
東京都港区西麻布1-8-13
03-6804-5850
営業時間 18:00~24:00
http://www.fermintxo.com/

(余談)
Can Fabesのサンティ・サンタマリアが今年2月に急死されて、その後にシェフになっておられる元ABACのXavier Pellicer氏。なぜ突然ABACのシェフを辞めてCan Fabesのサンティの下に行ったのか、作元シェフに教えてもらった異動の経緯によると、不祥事だったらしいです^^;
私は今夏初めてCan Fabesに伺いましたが、堅実だなと。3星は落ちても2は固いのじゃないかと思うような美味しさでした。
サンティが急死した今、まあ、落ち着くところに落ち着かれたということかもしれません。