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前回(2015年)のオータニでのフェアの記事は→こちら 
今回のオータニ公式サイトは→こちら

「(パリ店の)予約ですか? 今なら3~4日くらい前なら入りますよ、ぜんぜん大丈夫」

こんな冗談を飛ばすほど、今回の佐藤さんはリラックスしていた。

東京で佐藤伸一さんの初のフェアが2015年に行われてから2年。
今回も、共同経営者のギヨーム氏ほかスタッフを引き連れての帰国フェアだ。

今回のテーマは黒トリュフ。
フランスの3箇所の業者さんから集めた、計13kg余りの黒トリュフを空輸されたとか。採集されて日が浅いからか、香りが黒と思えないほど強い。
例のスペシャリテ「たまねぎのロースト」は、前回のチョリソではなく、別メニューで黒トリュフを使って提供された(黒トリュフのタルトと合わせ+10,000円)。

メニューは前回より2品増えて、計12皿。
お値段も前回より2,000円増。

Carotte
キャロットキャロット
Navet
カブとバラ
Crabe
カニと白バルサミコ

Saint-Jacques
ホタテとコンブ

Calamar
イカとカリフラワー

Homard
オマールブルーとシェリー

Granny Smith
グラニースミスとカルダモン

Veau
仔牛とトリュフ

Citron
レモン
Ananas
パイナップルタルトスとペドロヒメネス
Chocolat
ショコラとノワゼットとバナナ

Flan
フラン(Hotel New Otani)


今回の食材も、ほぼフランスからの持ち込みらしい。
前述の黒トリュフをはじめ、アミューズの「キャロットキャロット」のにんじん、カブ、オマールブルー、仔牛に至るまで「ほとんど全部といってもいいくらい」。

日本の食材は、ホタテ、コンブ(真昆布)。イカ(アオリイカ)もだったかな。ごくわずか。
玉ねぎはもちろんフランスからで、佐藤さんは今回も、日本の食材で新しい料理を作るのではなく、自分がフランスで作り慣れた味を、フランスの食材で可能な限り再現する方針のようだった。
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Navet
カブとバラ

バラの香りの軽い酸味のある固めのジュレに、薄切りのカブ。
意外と…といってはいけないのかもしれないけど、合う。バラの香りとのバランスがキモなのかな。
カブの甘みや食感がバラと合うのか、よくわからない。
ヒントは、カブの下にクリームがほんのわずかしのばせてあったこと。カブと乳製品系のクリームのようで、この軽さが下のジュレと味をつないでいたようだった。
あとで佐藤さんにうかがうと、「合うかなと思っていろいろ試した結果です」。
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Crabe
カニと白バルサミコ

白バルサミコがちょうど三杯酢で和えたカニを思い出させて、でもフランス料理の味わい。
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Saint-Jacques
ホタテとコンブ

水のように繊細な真昆布のジュレ。もっと昆布の香りがしてもいいんじゃないかと思うくらいだ。
でもこれより強いと、きっとホタテとけんかしてしまうのだろう。
酸味としてはシトロンキャビアが数粒。ビネガーではこれまたホタテの存在を薄くしてしまうのだろう。

2014年12月にパリでデジュネを食べたときの牡蠣とジュレを思い出した。
ジュレは味より食感が出ればよいという意味なのか、牡蠣のおいしさを引き立てていた水のようなジュレ、今ではもうあのときのジュレの味がなんだったか思い出せない。
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Calamar
イカとカリフラワー

「いつものやつ」。
このカリフラワーの繊細な薄さは毎度感動する。
佐藤さんは今回は、これをコースに入れないつもりだったらしいが、「これがコースに入らないならキャンセルする」という連絡が何件かあって、それなら、というので入れることになったとか。
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Homard
オマールブルーとシェリー

ソースは、ペドロヒメネスを2種使っているらしい。
その甘さを、手前のカカオパウダーの香りがさらに増幅させる。
一歩間違えるとデザートのような甘さになるところを踏みとどまっている、ぎりぎりのバランス。
写真には写っていないが、きざんだ苺のコンポートが付け合せ。
甲殻類のうまみを、甘さで引き出して、酸味も苺で足している。苺にはもちろん甘みもある。
なるほど、うまいなあ。
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Veau
仔牛とトリュフ

ヴァン・ジョーヌのソースと真空調理で火入れされた仔牛。付け合せはアーティーチョークとサルシフィ。
サルシフィ(西洋ゴボウ)の土っぽい香りとヴァン・ジョーヌの酸味とナッツ系の香り。ソースをガチで頂くのは久し振りかも。
ヴァン・ジョーヌのナッツ系の香りを増幅するように、ヘーゼルナッツ(ノワゼット)の刻んだのが仔牛とトリュフの陰に仕込んである。

コースを通して感じたのは、ペドロヒメネスの甘みとカカオの甘み、ヴァン・ジョーヌのナッツ系の香りとヘーゼルナッツの香りなど、甘みやうま味、酸味が、ひとつの器にひとつの味でも位相の異なるものが確信犯的に2つ以上盛り込まれていることだった。
その組み合わせが、料理全体に複雑な味を生み出すのだろう。

最後が仔牛で白い肉だったので、赤ワインというには重すぎ、コースは比較的あっさりと流れていった。
以前、佐藤さんの料理に抱いた「上善水の如し」という印象は変わらない。
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今回のフェアを前回と比べると、大きな違いは器だ。
今回はほぼすべて、パリ店と同じ、ジャン・ルイ・コケが使われていた。
道理で、違和感なくパリでの食事のイメージで食べられたわけだ。
前回はオータニの器(→前回記事)、佐藤さんはこれがずいぶん心残りだったようで、それが今回の全点輸入に繋がったらしい。

日本での販路を拡大したいジャン・ルイ・コケ側との交渉はいろいろあったらしい。
それにしても、ベラヴィスタの約80名分×ひとり6皿(くらい)を今回のために輸入されたとは豪儀なことだ。
皿はこのあとベラヴィスタに残置されるそうで、佐藤さんとオータニ側の、フェアへの気合いのほどがわかるひとこまだった。