一昨日、ミシュランフランス2017の結果が発表されました。
フランスの日本人シェフで佐藤伸一さんに続く2人目の2つ星昇格、Restaurant Keiの小林圭さん、おめでとうございます。 (→過去記事
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「いいなあ。行ってみたいんすよね~」
別のレストランの話からで恐縮だが、Favikenの話を料理人さんとすると、よくこういう反応が返ってくる。
Favikenは、スウェーデンの首都ストックホルムから飛行機に乗り、さらにクルマと、延々と乗り継がないとたどり着けない「辺境の地」にあるレストランだ。
そのローカル性や、酪農学校を改築し、店の前に菜園を作って、近隣からハーブ類の食材を採集する周囲の環境、いわゆる”職農接近”な部分は、ある意味で料理人さんの憧れる究極のかたちの一つなのだろう。

では、視点を国内に向けて、その要素を実現しているレストランは?と尋ねると、必ず名前が挙がるであろう菜園ガストロノミーTOP3軒が揃い踏みしたのが今回のコラボイベントだ。

静岡・富士宮のレストランビオス。
和歌山・岩出のAiDA。
青森・弘前のサスィーノ。
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舞台は富士山のふもと、レストランビオスだ。
レストランの周囲には「ビオファームまつき」の4ヘクタールの畑が点在している。
ビオファームまつきは、レストランビオスのオーナー松木一浩さんが経営する農場で、現在は年間を通して、60種類の野菜を育てているという。

今回のコラボは、レストランビオスのシェフ・坂本啓さんと、アイーダの小林寛司さんによる合作。
サスィーノの笹森さんは、自家製のサラミやハムなどの肉製品や、りんごからつくったワインでの参加と現地からの中継だ。

メニューは全12品。
抽象的なタイトル。
bios_menu


bios_heart

こころ
最初のひと皿。芯=こころ、かな。最初にふさわしく、農園をそのまま切り取って食卓に持ってきたようなあざやかな緑のイメージからスタート。
その次に「個」、笹森さんの自家製生ハムが続く。
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今回の食材はほぼ富士宮のもの、ふだんのビオスよりも野菜の味の多様さを前面に出していくスタイルだ。
葉物など野菜の苦味、果物の酸味と甘味、そして旨み。味の多様性は、肉や魚より野菜の方がはるかに豊かなんだなと感じさせる。

そういう意味で、今回は、農園とレストラン(と食べる側も)の距離が近いからこそできる、微調整や、作る側の「遊び」を感じさせる。食べる側の許容度も見たうえでの調整かなと思う。
こういうコラボレーションでは、作る側と食べる側の距離もまた近い。このような「近さ」が、コラボレーションの楽しさのひとつなのだと最近気づいた。

作る側の「遊び」、例えばこんなもの。
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エキス
緑茶と鴨のコンソメと、緑茶チップスに猪のテリーヌ。
茶と鴨、と、茶と猪。
ひとつの皿の中でお茶が2度繰り返されている。「大切だから2回言いました」みたいな声が料理から聞こえてくる感じで楽しい。

緑茶はかなり苦味が強調されている。スープの鴨のコンソメの塩はぎりぎりまで少ないので、味としては、お茶が前で鴨のうまみが後ろから来る。
「静岡はお茶のイメージだったから」(小林さん)。
発想の元は単純でも、味の組み立ては単純ではない。
お茶と鴨が合うのは意外だった。苦味とうまみが補い合っている。
アイーダではお茶を八朔に合わせているそうだ。八朔だと「苦味と苦味が合わさって深くなります」。マイナスとマイナスを掛けてプラスにするみたいな発想の転換だ。

あるいは、調理でも、このような、「おいしい」と「やりすぎ」のラインをぎりぎりに狙って出す感覚。
もうちょっとかしこまった場であればNGかもしれないものも、おいしいものであれば出てくる。
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誇り
白×白の組み合わせ。
北欧の引き算の料理にならい、素材主義でいく決意とかプライド…のイメージから「誇り」なのだそうだ。
小林さんが去年旅行されたばかりの北欧の料理からインスパイアされたようなひと品。

主役はオリーブオイルと塩。それをつなぐのがカリフラワーで、笹森さん作のホエイの泡にわずかな酸味。
うまみのバランス、食感のバランス。何も足さない何も引かない。
「カリフラワーと乳製品は合いますよね」(松木さん)
そうそう。私もFavikenで食べたキャベツを思い出した。 

焦げた部分から甘みが強く出ている。というか、焦げすぎではないだろうかいくらなんでも?
「あ、思ったよりは焦げすぎました」(坂本さん)
やっぱり。
でもそれがここでは正解。焦げのそばが、最も甘みが強かったからだ。
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メインは肉や魚ではなく、ネギだった。
肉や魚がコースのメインでなくてもいい、という思いで順番が直前で変更されたそうだ。
笹森さんのブッラータを添えて、三人の思いが最も詰まったものだというのがメインになった理由。
(肉は富士宮で捕獲された鹿(「大寒の里山から」、魚はイワナ(「清流」)。)
豪快に岩塩と砂糖で蒸し焼きに。あえて店の中央で取り分ける。
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融合

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デザートも意表を突いている。外はまだ冬のイメージで「」。
牛蒡と牛蒡のクレープだ。
苦味と甘味をあわせて、甘味の奥深さを広げるのに使っている。
食べながら、初春を祝う花びら餅を頂いている感覚になる。

ビオス・AiDA・サスィーノいずれも、農園で収穫した野菜を用いている点では、いわゆる地産地消のレストランであり、どんなレストランでも、地元の食材を生かすことは、意識するしないに関わらず必然でもあるといえる。
そんななかで、今回の3軒は、そこからはるかに先に進んでいる。
それは地元の食材に料理の作り手と食材の生産者の思いを載せようとする意思であり、それをわかりやすく食べ手に伝える技術だ。
食べ手はその大船の中に揺られていればよい。
そんなとき、自分は自然のなかのひと粒であり、自然の営みの中でただ生かされていると感じるのだ。

菜園ガストロノミーの夢のコラボレーション
「地方のレストランだからこそできるもの」
http://www.bio-farm.jp/bios/News/Villa_AiDA.pdf

レストランビオス
http://www.bio-farm.jp/bios/
静岡県富士宮市大鹿窪939-1
0544-67-0095
火・水休
シェフ;坂本啓


Villa AiDA ヴィラ アイーダ
http://villa-aida.jp/
和歌山県岩出市川尻5-5
0736-63-2227
月休(祝日は営業)
シェフ;小林寛司


オステリア エノテカ ダ サスィーノ
http://dasasino.com/
青森県弘前市本町56-8 グレイス本町2F
0172-33-8299
シェフ;笹森通彰



Restaurant Bio-s from IDEA PHOTO WORKS on Vimeo.