Fiskeberが北欧の海の幸ならば、ELKANOはスペイン・バスクの海の幸だ。
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エルカノはサンセバスチャンからクルマで45分ほどの港町・ゲタリアにある。
ゲタリアの場所はバスク州の東の端、ほとんどフランスという位置だ。
古い港町で、島南部にあった漁港はかつて捕鯨基地でもあったという。
チャコリの名産地でもある。チャコリメーカーで有名なアメストイはゲタリアが産地だ。
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海岸に接して地形の起伏があり、エルカノのあたりは切り立った崖になっていて、砂浜まで高低差が20~30mありそう。海岸が浸食して洞窟のようになっている箇所もある。
この地の偉人に、16世紀にマゼラン船団を指揮し、史上初となる世界周航を達成したファン・セバスチャン・エルカーノ(Juan Sebastián Elcano)がいる。
エルカノはその探検家と同じ名前を持つ、由緒ある店だ。

店は交差点付近の目立つ場所にある。
8月のバカンスシーズンも営業していてありがたい。
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お店の外に、巨大な炭の魚焼き場が据え付けられている。
店の裏でなく、正面玄関横に堂々と。丸のままのカレイが10尾くらいは一度に焼けそう。
これがウチの看板だぜ!という感じで潔い。すでにもうもうと煙が上がっている。

ちなみに店の入る建物の上階を見上げると、住宅かオフィスのようだ。上の階の人たちは、窓を開けたり、洗濯物を干したりはしないんだろうか?
日本の薪焼きのお店などだと、どうしても、煙の処理について近隣の人との話し合いが不可欠なのだという話を以前聞いたことがある。それを思い出しながら店の外観をながめると、このあけっぴろげな感じが、少しうらやましくなる。

メニューはアラカルト主体。
4人程度で行って4~5品頼んでシェア、というのが最も効率が良い。

今回の注文
ENSALADA MIXTA(ミックスサラダ)
COCOTHA DIF TEXTURA(ココチャを異なる調理法で)
CHANGURRO HORNO(カニのオーブン焼き)
TXUP SOPA(魚のスープ)
MERO(本日のおすすめより)
RODABALLO PARRILLIA(カレイ)
POSTRE
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説明してくださるアイトールさん。
亡くなった先代の息子さん。今は店を切り盛りしている。

ここの名物料理はカレイ。
個体の重さ(キロ単位)で値段が決まる。今回ほかにメロを頼んだりしたので、小さいものを4名で1尾注文した。
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この、カレイを丸ごと焼くための網は、この店の考案なのだという。それまで切り身で焼いていたのが、この網を70年代に開発して丸ごと焼くようになってから、焼いている間にうま味が逃げなくなった。
この街の近所の料理店では、この店が考案したこの焼き網でカレイを焼いているらしい。
部位によって焼き加減や味が異なるので、必ず、いろいろな部分をだれもが均等に食べられるように切り分けて持ってきてくださる。
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バスクでは必ず食べたいココチャ(メルルーサやタラの顎肉)。
1匹から1つしか取れないことをあらわす特徴的な形。1皿注文して16匹分あった。
サルサヴェルデ、フライ、単純な炭火焼き。
どれも、ココチャを食べるときの典型的な食べ方だ。

ちなみに、日本ではココチャは今のところほぼ手に入らないらしい。
先日行った都内バスク料理店のメニューに「ココチャ 近日入荷」となっていた。うかがうと、今はなかなか入ってこないという。以前は某都内カタルーニャ有名料理店のつてで仕入れていたらしい。
店同士で融通しあうのは当たり前なのかもしれないが、そういう仕入れの仕方もあるのかと驚いた。
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チャングーロ(カニ)。
日本では鍋のだし以外でここまでしっかり味をつけることはあまりない気がするが、これもこちらでしか頂けないような味。
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魚のスープ。
ブイヤベースとも何か違う。甲殻類の量だろうか? 赤ワイン系の風味もある。
隠し味にパンを砕いて入れているそうだ。

香港でいただく例湯を思い出す。
どちらも魚介系がベースながら、根菜が多く入る淡い例湯と、こちらのくっきりスープでは文化が違うのだけれども、どちらも塩分はぎりぎりにおさえてあってこくがあり、魚のスープを洗練させて行き着くところは同じようなところなのだなと思う。

スペインは欧州のなかでは比較的魚を食べる国だ。
単純に漁獲量だけでいえばヨーロッパの中では3位、世界で22位(125万トン)。日本よりはもちろん少ないのだけれど、比較的魚を多く食べている国だといってもいいと思う。、資料:GLOBAL NOTE 出典:FAO

それでも、流通のスムーズさや鮮度で言えば、スペインを含め欧州は日本には及ばないというエピソードをよく耳にする。
今もそうなのだろうか?
ここで魚料理を食べているぶんには全くそのような感じはしない。

日本以外で、魚料理として「これは日本では食べさせてくれる店がないからここまで来なきゃいけない」と感じたのは、これまで私にとっては香港だけだった。
それに、今回ここが加わった。
漁港に近くて、素朴で新鮮で良いという「手をかけなくてもうまい」ものではなく、良いものをさらに調理して洗練された料理となっているもの。

新鮮であることは大前提でありつつも、手をなるべくかけないで素材の味をそのまま生かすという発想ではなく、手をかけた上でいかにおいしく食べさせるかというレベルが、ここまで来ているんだと思った。

実はここ、ポストレ(デザート)も力を入れているらしく、食べながらサービスの人が運ぶ料理をながめていたら、何種類かあるポストレの中でダントツにミルフィーユが出ていた。
確かに良かった。魚料理店で「やっつけで作ってる」感じがない。
こちらもぜひ1卓に1皿。
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ELKANO
http://restauranteelkano.com/
Herrerieta Kalea 2,20808,
Getaria,Gipuzcoa,
Spain
+34 943 14 00 24

予約はTELのみ。
ちなみに、ミシュラン1つ星。

参考資料としてぜひ。↓
深谷さんの本以外すべて持っています。どれも参考になるものばかり。
「歓びのスペイン」には、ゲタリアとELKANOの記事が3ページ出ています。