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先週の伊勢丹のイタリアフェアのイベントで徳吉洋二さんとタッグを組んだのが、代々木上原のイタリアン「il Pregio(イル プレージョ)」の岩坪滋(いわつぼ・ゆたか)さんだ。

il Pregioには、オープン半年後の2013年4月に伺ったことがあった。
その頃の雑誌に掲載されていた写真が残っていた。絵画的に美しい繊細さが強調されている。
ilPregio_magazine

その前回の訪問当時、帰り際に岩坪さんに挨拶させていただいたときに、料理は人なりというか、ご本人の繊細さ(繊細さというと岩坪さんから反論が来るかもしれないけど、言葉を換えると細心な感じ)が、料理の繊細さと、繊細だからこそたぶん決して破綻しない料理の完成度に繋がっているのを感じて、それが心に残っていた。破綻しない料理をコンスタントにコースで出せるのは貴重な才能だ。
ミシュラン1つ星は、そのへんが評価されてのことなのかもしれない。

岩坪さんは日高良実さんの「アクアパッツァ」を振り出しに、2003~06年まで渡伊。イタリア北部ピエモンテにあった「Ristorante Flipot」ほか、イタリア全土のお店で修業経験がある。il Pregioを立ち上げる前の店「リストランテ カシーナ・カナミッラ」(中目黒)料理長時代の岩坪さんを知っているかたが多いみたい。

今日訪問の理由はもちろん、伊勢丹フェアで頂いた料理の答え合わせ。
時間をおかずに食べ比べることでわかることは、けっこうあるのだ。

お昼はおまかせコース一本勝負。

本日のメニュー Menu Pranzo
Inizzio
(アミューズ)
大根・スペック・檸檬・ケシの実のタルト

Antipasto(前菜)
秋刀魚2種の仕立て
マリネ(茄子のストゥファート・肝のソース・ディル・セルフィユ・ペペロンチーノ)
コンフィ(インカの目覚めとその皮のブロード・スプラウト)


Primi Piatti(パスタ)
タリオリーニ(テネルーミ・浅利・マグロのからすみ・檸檬)
スパイシーなクスクス(アスパラガス・ブロッコリー・長芋・大黒シメジ・アーモンド・ペコリーノ)


Secondo Piatto(メインディッシュ)
北海道産鴨胸肉のロースト、たたき牛蒡のストゥファート そのスーゴと伏見唐辛子をソースにして

Dolce(デザート)
パイナップルと白インゲン豆 バジリコのグラニテ カカオのソルベ オリーブオイル
ilPregio_foiegras

メニューに加えていただいた、岩坪さんのスペシャリテである「かぼちゃとフォアグラ」。
かぼちゃのエスプーマの甘み。塩気のあるフォアグラは一口大に切ってある。

エスプーマにすると、食材の姿を覆い隠してしまうので、どうしても見た目や味が茫洋としたものになりがちなのが、このひと皿に関しては、エスプーマで完成された料理だと思う。

この料理は、フォアグラとかぼちゃをひと口で食べることで、その調和を楽しんでほしいというねらいがあるという。
そのためには、かぼちゃをフォアグラと一緒にすくえるような軽いものにしなければならない。
スープという手もあるが、液体なので、フォアグラに絡めてひと口で食べるのは難しい。
固形のままだと、ひと口ですくうのが難しくなる。
そうすると、ベストなのはやはりエスプーマということになる。

一方の食感を消すことでメインの食材が際立つのは、先日のAzurmendiで食べたルジェにアルギン酸でかためた付け合せのカリフラワーを思い出す。あれも、カリフラワーを粒状にすることで、食感を消してルジェの味と食感を強調する効果があった。
  Azurmendi_rouget

伊勢丹のフェアで出た「シチリアと言えば…」では、軽い食感のリコッタチーズのエスプーマがかかっていた。岩坪さんいわく「僕だけのアイデアではないです」ということだったけれど、このかぼちゃとフォアグラを食べると、やはりあのリコッタチーズのエスプーマの意図が見えてくる。あのときのリコッタチーズは、中に入っていた食材をつなぐ役目をしていた。
isetan_sicilia
シチリアと言えば…
Parliamo di Sicilia...
豊穣の大地シチリアの様々な名産物(茄子・グリーンオリーブ・アーモンド・トマト・レモン・ケッパー・オレガノ・ウイキョウ・リコッタチーズ・パーネフリッテ)が織りなす重層的な味わい


ilPregio_tagliolini

タリオリーニ(テネルーミ・浅利・マグロのからすみ・檸檬)

テネルーミとはズッキーニの一種の葉と茎の部分で、その部分を食材として用いるのは、シチリアの州都パレルモだけらしい。
そのような「ここでしか食べない」というような、局所的というかローカルな食文化は、イタリア料理の特徴の一つだ。

体系化されているフランス料理は、基本的にパリで学べば(地方料理を除いて)だいたいのフランス料理が学べるのだという。
一方イタリア料理は、例えば北のロンバルディアで作っていて南のシチリアでは作っていないような料理が数多く、"中央の料理"とでも呼べばいいのか、標準的な料理がない。
岩坪さんをはじめとして、イタリア料理の料理人さんのなかで、イタリアのどこか一地方だけでなく全土で修業経験がある人がけっこう多いのは、その局所性を各地で吸収していきたいという意図もあるようだ。
ilPregio_couscous

スパイシーなクスクス(アスパラガス・ブロッコリー・長芋・大黒シメジ・アーモンド・ペコリーノ)
クスクスは、ガラムマサラでの味付けなので、風味としてはインドや中東系の…少なくともイタリア料理の味付けではない。
しかしそこに、アスパラとブロッコリーのソースを含め、アーモンドの食感やペコリーノの風味が加わると、イタリア料理にしか思えなくなるのが不思議。

メインの風味が別の国でも、それを囲む食材と調理でイタリア料理になるのだから、フランス料理とか、イタリア料理など「○○国の料理」かどうかを私たちが判断するのは、やはり、食材からではなくて、人が手を加えること――つまり調理によってなのだ。
ilPregio_Yutaka_Iwatsubo

岩坪さん、先週と今週続けて、ありがとうございました。

il Pregio
TEL 03-6407-1271
渋谷区上原1-17-7-2F
Lunch 11:30~13:30L.O.
(木・金は夜のみ営業)
Dinner 18:00~21:30L.O.
定休日 水曜日・第一木曜日

↓いずれも岩坪さんの掲載号。「シェフ」106号は岩坪さんのインタビュー4ページ分。