Emargency_passport_of_Japan

タンザニアで同行者が旅券(パスポート)をなくした。

そのとき、私たちは現地の乗合バスに乗っていた。
公共交通機関のないタンザニアの島・ザンジバルでは、ぎゅうぎゅう詰めの日本製中古のマイクロバスが、ダラダラという呼び名で多く走っている。

バスに乗る前か、乗ったあとか、ともかく、旅券を入れていたザックごと消えたのだ。
中身は旅券、現金、キャッシュカード、クレジットカード、衣類。
残ったのは、着ていた服と、現地通貨が少し入った財布と、ポケットに入れていたスマホだけ。
盗難なのか紛失なのかさえはっきりしない。

ザックがまるごとなくなったとわかったときは、二人で蒼白になった。
二人で記憶をいくらたどっても、どこまでザックがあったのか思い出せないのだ。

悲嘆に暮れていてもしかたがない。

海外旅行先で旅券をなくしたときに、やるべきことは3つある。

1.地元警察に行くこと

2.旅券再発行に必要なものを集めること

3.滞在場所管轄の日本大使館へ行くこと


地元警察で調書を作成


バスを降りて、炎天下を最寄りの警察署にとぼとぼと歩いて向かった。
すべては、警察で調書を書いてもらうところから始まる。これがないと、なくした証明がないので、大使館でも旅券を発行してくれないし、クレジットカード会社で海外での盗難等の補償も受けられない。
また、後日発見された場合の連絡等にも必要になる。

警察署でしばらく待たされたのち出てきた調書は「旅券紛失」。

え、旅券だけ?
「なくしたのは旅券を含めて一切合財」と申告したはずなのに、調書には旅券のことしか書かれていなかった。ということは、この調書だけ見ると、旅券しか紛失していないように読めるわけだ。
しかし係官が書き直すことを渋ったため、書き直してもらうのは諦めざるをえなかった。

旅券のタイプは3種類


まず、どういう旅券を発行してもらうかを決めなくてはならなかった。
どれにするかは、発行に必要な日数と経由地や目的地など、本人の事情によって異なる。

A.通常の旅券(発行日数1週間程度)
B.帰国渡航書(「日本に」帰国するためだけの書類。帰国に経由地が含まれる場合は不可)
C.緊急旅券

Cの緊急旅券とは、通常旅券より早く(今回は即日)発行できる旅券だ。
直行便でなく経由便で帰国する場合や、海外在住者など、住所と国籍が異なる場合などに用いるらしい。
帰国後も1年間は引き続き使えるが、この旅券にはICチップが入らないので、米国には入国できないし、緊急旅券をそもそも発行しない国も多いらしい。

今回は旅の前半で帰国日までまだ日数があったのと、帰国日までダルエスサラームにいるより帰国の出発地アジスアベバに早く飛ぶ方が良いとなり、緊急旅券を選択した。



タンザニアの日本大使館は、(実質)首都ダルエスサラームにある。
そこに紛失者本人が出頭できなければ話にならないので、ザンジバル島を出てフェリーで1時間半のダルエスへ向かった。
Embassy_of_Japan

ダルエスのタンザニア大使館。
警備は要塞のようにものものしいが、大使館員には親身に対応してもらえてほっとした。久し振りの日本語だ。
午前に申請に行き、午後には緊急旅券を発行してもらえることになった。

緊急旅券作成に必要なもの


・手数料118,000Tzs(約¥5,800)
・写真3枚
・警察の調書
・戸籍抄本(戸籍謄本でなくて可)

本人の顔写真は、ザンジバルでフォトサービス店を教えてもらって撮影。パスポートに貼る現物と、申請書類(2通)に1枚ずつ、計3枚必要だった。
日本での通常旅券発行の場合写真は1枚で済む。念のためにと多めに注文しておいて助かった。

最も難物だったのは、戸籍抄本の取得だ。
旅券発行がどんなに緊急でも、本人特定書類はどうしても必要なのだそうだ。
そりゃそうだ。どんなに日本語を話せて顔が日本人っぽくても、国籍が日本人だということにはならない。
そうするとやはり行き着くのは戸籍なのだ。

日本国内で、戸籍抄本を取って写メ(スキャンPDFが望ましい)してくれる協力者がいなければならない。しかも、平日に役所に行ってもらう必要がある。紛失日がもし土曜日なら、月曜まで待たされることになる。
本人以外で戸籍抄本を取得できるのは、原則として父母・子・配偶者のみだ。友人など第三者の場合は、委任状が必要になるなど面倒だという。

今回は、旅券を紛失した翌日には、同行者の実父に役所に出向いてもらえた。
これがもし、旅券を紛失したのが私だったらかなり厳しかっただろう。
私の両親は私の本籍とは遠く離れた地方に住んでおり、急ぎの取得は不可能。
友人に頼むにせよ、平日に休みを取ってもらわないとならないのだ。

イエローカードも紛失すると入国できない


旅券再発行にあたり心配したのが、イエローカードなしでエチオピアに入国できるかということだった。

黄熱病ワクチンを接種したことを示すイエローカードは、アフリカや中南米の入国の際に必要になることがある。
基本的には、感染地域(国)からの来訪時にのみ必要になるもので、今回のエチオピアやタンザニアでは不必要なはずだが、念のため持って来ていた。
空港によっては、イミグレーションの前に、乗客全員にイエローカード提示を求められることもあるからだ。

今回は不幸にも、旅券と一緒にイエローカードも紛失してしまった。
しかも往路の到着地キリマンジャロ空港(タンザニア)ではなぜか、乗客全員がイエローカードを提示させられていたのだ。エチオピア入国の際にももし同じようなことが起きたら、エチオピアに入国できない可能性があるのだ。

結局は結果オーライだった。
いちかばちかで飛んだ帰路のアジスアベバ空港では、イエローカードの提示を求められることはなかった。

緊急旅券を取得してエチオピアに入国できたら、今度は私が38℃超えの熱を出し、結局は、あまり観光もできずに帰国することになったが、最終的にスケジュール通りに日本に帰国できたことに、これほどほっとした旅行はなかった。
もし当初予定の帰国日までに緊急旅券が用意できなければ、日本までの航空券は紙切れとなり、新たに高額な航空券を現地で買い直す必要があったわけで、これも不幸中の幸いだった。

帰国後にわかったこと


緊急旅券に自動化ゲート設定はつけられないらしい。
そもそも機械で読み取れず、審査のたびに係官の手入力になるんだそうで、そう考えるとこれから1年は使える緊急旅券、不便といえば不便だ。

海外に頻繁に出て旅慣れている人も、そうでなくても、渡航先で旅券を紛失する可能性がゼロの人はいない。
自分だったらその場合どうなるのか、事前のシミュレーションはしておいて損はないかもしれない。

【参考資料・外務省のサイト】
パスポートを紛失したり、盗難にあった場合にはどうすればいいのですか?

国内及び国外でパスポートに関する申請手続きに通常必要な書類