11月28日(火)、「ミシュラン東京2019」が発表になった。
michelintokyo_2018

対象地域は昨年と同じ東京のみ。
以前入っていた横浜・湘南地区は2015年から特別版(クラブミシュラン)の更新のみとなっている。

全店リスト ぐるなび海外版
http://gm.gnavi.co.jp/restaurant/list/tokyo

全店リストのPDF(英語)は→こちら

ミシュランタイヤ株式会社のプレスリリースは→こちら
(お店のリストはありません。↑上のリンクからどうぞ)

結果をざっくり紹介


軒数は以下の通り。

◆2018(昨年)
3つ星 12軒

2つ星 56

1つ星 166

ビブグルマン 278

◆2019(今年)
3つ星 13軒(昨年+1)

2つ星 52(昨年-4)

1つ星 165(昨年-1)

ビブグルマン 254(昨年-24)


◆新3つ星 1軒
L'Osier
(中央区/フランス料理)

◆新2つ星 3軒
《新規》
木挽町 とも樹
(中央区/寿司)

《昇格》
ナベノ‐イズム
(台東区/フランス料理)
青空(中央区/寿司)

◆新一つ星(ビブグルマンからの昇格含む)29軒
《新規》28軒
曙橋 まる富、荒木町 たつや、アルゴリズム、江戸前晋作、Ode、銀座 やまの辺 江戸中華、銀座 凛 にしむら、久丹、私厨房 勇、上、シンシア、鮨桂太、鮨 尚充(たかみつ)、鮨まつもと、炭火割烹 白坂、Takumi、多仁本、てんぷら 下村、てんぷら前平、南雲、七草、日本橋 蕎ノ字、不動前 すし 岩澤、Yaoyu、山﨑、ラ・クレリエール、ランベリー、レクテ

《ビブグルマンから昇格》1軒
SOBAHOUSE 金色不如帰

◆新ビブグルマン59軒 
主なところでは(主に西洋系)…Arrocería la Panza、Bistrot Quotidien、Bistro Topology、デトレゾン、香味屋、錦福 香港美食、ラ ブーシュリー グートン、ロス レイエス マーゴス、ロットチェント、おにぎり浅草宿六、ペタンク、しみいる、ティキ・プラーカなど。
ティキ・プラーカのビブはびっくりした!八谷さんおめでとうございます)

その他の異動(降格など)
3つ星は、1軒が昇格した(ロオジエ)。
2つ星は、3軒が追加され、5軒が1つ星へ(銀座 一期、西麻布 き久ち、クレッセント、重よし、西麻布 拓)、1軒が星を落とした(味満ん)。
1つ星は、28軒が追加され、1軒がビブグルマンから昇格(SOBAHOUSE 金色不如帰)、33軒が星を落とした。
具体的には(主に西洋系)、Benoit、Bon Chemin、Casa Vinitalia、ジョンティ アッシュ、ぎんざ 一二岐、銀座うち山、La Bombance、ラ フィネス、ラノー ドール、マサズキッチン、おはらス レストラン、オストゥ、レストラン・パッション、プリムラ、招福楼、鮨いまむら、鈴なり、たつむら、天ぷら はせ川、天冨良 いわ井、萬屋 おかげさんなど。

星がつく理由は実力を認められたからだとして、逆に、星がなくなる理由はいろいろだ。
シェフの異動、あるいは移転、閉店予定など、なかにはまだ公表されていないものもある。
星がなくなったからといって、単純に実力がどうこうということにはならない。

今年も、ビブグルマンの異動がいつにも増して多かった。
掲載件数が315軒→278軒→254軒と減り、なおかつそのうち44軒つまり約2割は新規掲載店。今年も相当な数の入れ替えだ。
プレスリリースは昨年も今年も、東京の地域特性として、流行の変化の速さと競争の激しさが書かれている。

今年は、はじめておにぎりがカテゴリとして登場したことがプレスリリースにトピックとして記されたため、国内メディアの多くはこれまでのラーメンでなく、おにぎりで埋め尽くされた。
店はビブグルマンに新たに掲載された「おにぎり浅草宿六」。都内で最も歴史のあるおにぎり専門店という。




カテゴリの拡大と地域の拡大


ところで、ミシュラン東京2019収録の料理のカテゴリは、現在いくつあるかご存知だろうか。

答えは41。
そのうち大きく分けて日本料理のカテゴリだけでも、懐石料理などが含まれる「日本料理」のほか、とんかつ、てんぷら、沖縄料理、うなぎ、あなご、ちゃんこ…と約23種類におよぶ。
12年前のミシュラン東京2008版のカテゴリ数が、フランス料理から天ぷらまですべて含めて15カテゴリであったことを考えると、これまでの12年間で調査範囲を相当広げてきたのだなと思う。



そのミシュランのカテゴリに関して、おにぎりが追加された理由を通して、フードジャーナリストの山路力也さんが考察している。
2009年にミシュランの当時の編集長が指摘した「日本の料理店の専門性の高さ」を引用し、今回のカテゴリ拡大はその発言に沿うもので、その国独自の食文化を紹介する編集方針上にあるものだと述べている。

確かにそのインタビューで、当時の編集長ジャン・リュック・ナレ氏が、日本の飲食店が「寿司店、刺し身店、焼き鳥店、うどん店」など専門店に細分化し、それぞれが専門分野に特化していることを評価している。(「中央日報」09年02月05日)

並び称される「黄本」ゴ・エ・ミヨが、どちらかというとミシュランよりモダンな、イノベーティブなレストランにいち早く目配りするといわれ、また、世界のベストレストラン50が、対象を最初から全世界に広げてスタートしている一方で、どちらかというとオーセンティックな選考のミシュランが掲載店舗を拡大するには、日本国内の専門料理店をより多く紹介し評価していくというのは理にかなっている。

掲載エリアに関しては、すでに現在、日本国内だけで19エリアまで拡大している。
これはほとんどの地域を、紙版で出さずweb上のデータメンテナンスのみて対応するという、ここ10年の新しい傾向によるものだ。

【国内の掲載エリア】(2018年11月現在)
北海道、宮城、東京、横浜、川崎、湘南、富山、石川、京都、大阪、
奈良、兵庫、広島、愛媛、福岡、佐賀、熊本、大分、鳥取
(書籍版・webのみ更新の特別版を含む)

来年春には「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」も刊行される。

雑感


個人的に最も感慨が深かったのが、ロオジエの3つ星昇格だ。
ロオジエの3つ星は9年ぶり。
この間、大改装をはさんだこともあり、掲載されていない時期もあった。
現在のオリヴィエ・シニョン氏がシェフに就任したのが2013年。押しも押されもせぬグランドメゾンがやっといるべき場所に戻ってきた感じがする。

inuaについても、いろいろと考えさせられた。
今年5月オープンのinuaに星が来なかったことは、いくらnomaの日本支店といえどもミシュランがイノベーティブに厳しいことを感じさせる(来年以降に来るかもしれないが)。
また、ここ1年くらいでオープンしたtxoko、ナカヒガシ、Kabiなどにも、星がなかった。
オリジナリティや料理のクオリティからも実力は十分と感じていたので、そのどれにも評価がなかったことは意外だった。ちなみに、東京の現在の「イノベーティブ」枠で星のある店は、ナリサワ、傳、スブリム、タパスモラキュラーバーの4軒だけだ。

一時期星がついたこともある北島亭やコートドールなども、星がなかった。
もう「ない」ことになってしまったのだろうか。
Sincere_Kitasando

新規1つ星になった店のなかで、今年はシンシアの石井真介さんの感激ぶりが印象深かった。
石井さんは前の店「バカール」シェフの時代、ミシュランの調査員に「悪態をつい」たことで、一生ミシュランの星は取れないと言われていたとのこと。
そのことがこれまで、石井さん自身はもちろん、店の若いスタッフたちへ星を見せてあげられないこととして、長期にわたりご自身の何重もの重荷になっていたであろうことを思い起こさせた。
今年は調査員さんが春に訪れ、当時のことを話し合ってお互いに謝罪したとのこと。そのときは決定的にこじれたと思われた感情も、解決するものは時間なのだなと思う。

星をとったシェフのSNSへの喜びの声とそれに対するゲストのコメントを読むと、毎度感じることではあるが、レストランへの評価は、シェフやオーナーのみならず、スタッフやゲストなど皆で分かち合うものであることを実感させる。

2018版の感想は→こちら

ミシュランガイド東京2019
【タイトル】ミシュランガイド東京2019
【発売日】 2018年11月30日(金)
【定価】 本体3,000 円+税(税込3,240円)
【ISBNコード】 978-4-904337-28-8 C2026
【発行】 日本ミシュランタイヤ株式会社

【国内の掲載エリア】(2018年11月現在)
北海道、宮城、東京、横浜、川崎、湘南、富山、石川、京都、大阪、
奈良、兵庫、広島、愛媛、福岡、佐賀、熊本、大分、鳥取
(書籍版・webのみ更新の特別版を含む)