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前記事Villa Aida
の翌日、木津のナカモトさんに伺った。
料理のジャンルとしては、どちらもイタリアンに入る。
どちらもパスタも出るし、ハーブが香るし、野菜がおいしい。

けれどふたりの料理は、面白いほど違う。

もちろん、作る人が違うのだから、味も違って当たり前。
それでもこれだけの違いはどこからくるのか、興味があった。
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季節のお野菜の一皿
仲本さんの今回の料理のキーワードは、2つ。
ひとつは酸味。
もうひとつは、強いものと強いものを当てるときのバランス感覚だ。

ちょっと強いかな?と思えるほどの、キリッとした酸味。
料理の、部分を、あるいは全体を引き締めている。

最初に出てきたひと皿は、地のものを連想させる野菜たち。
生のもの、火を通したものなどさまざまだ。
その下には土に見立てた砕いたオリーブを敷き、リコッタチーズの燻製のパウダー。
透明なものはドレッシングをかためたシートだ。

透明で味がないようにも見えて、実際に食べるとけっこう酸味が強い。
調味料だから当たり前といえば当たり前だ。
食べ手が自分の好みで味の濃さを調節できるところのがミソだ。(ミソじゃない、ビネガーね)
もし液体でかけられていたら、薄味が好きな人はよけることが難しい。

ひらひら農園(生駒)やエコファームアサノ(八街)などの野菜を入れているそうだ。
一つ一つの野菜の味が濃い。
ドレッシングの酸味も強め、強いものに強いものを当てにいっている感じがする。
どちらかが薄かったら、バランスが取れないのだろう。
バランスがとれているので、結果として食後に適度になだらかな印象となって残る。

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熟成金目鯛、生ハム
味の強いものと強いものの組み合わせ、もうひとつは魚料理にあった。
金目鯛とスープの組み合わせが、打ち震えるようなおいしさだった。
なんだろうこの組み合わせは。

「肉」は、パルマ産生ハムのスープ。
「魚」は、勝浦の金目鯛は2週間熟成で炭焼き。
魚に、肉のスープ。
どちらかをはっきり主役にしてもう一方を脇役にするならともかく、同じ重さだ。
しかも金目鯛は熟成されてさらに味が濃くなっている。それがこれほどに合うとは。

スープだけ飲んでみた。
すると意外なことに、「普通においしい」なのだ。
それなのに金目鯛と合わせたことで、1×1が30くらいの力を発揮している。アミノ酸とグルタミン酸の相乗効果なのだろうか。

あとで仲本さんにうかがうと、やはりこの組み合わせ、試行錯誤のたまものらしい。
たとえば牛骨だと、スープがクリアすぎてダメだったという。このハムのような、もっとパンチのある同士が良かったのだそうだ。
生ハムのスープに浮かんだニラのオイルの香りが、これまたぴったりで泣かせる。

強いものと強いものをぶつけていながら、嫌みがなく、どこまでもクリアだ。
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天龍鮎
これは鮎の苦味よりも、酸味の豊かさが心に残った。
天龍鮎、季節は走りの半天然物。生きている状態のものを見せに来てくださる。
稚鮎のフリット。
印象的なポイントは泡の甘酸っぱい酸味だ。
ピクルスのマリネ液を泡立てたものだという。
視覚的にも、鮎が川の中で跳ねたときできる水の泡に見立てる、粋な盛り付けだ。
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新玉ねぎ、アスパラ、フォアグラ
マリネした新玉ねぎのロースト、さくさくのパイ生地、フォアグラのパウダー、アスパラのアイス。
かなり強めな新玉ねぎのマリネ具合。
甘みとパイの油分のあいだに割り込む、思い切ったバランスだ。
ちょっとやりすぎ感のあるこちらも、この流れの中には違和感なくおさまっている。
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バヴェッテ
焼きナスを練り込んだバヴェッテに、具も焼きナス。付け合わせはセリ。柑橘の粉末ははるか。
日向夏の交雑から生まれた、レモンのような酸味のはるかの香りが、焼きナスの特徴的な香りを引き立てている。

今回、ナカモトさんにうかがったのはお昼だった。
晴天の5月。
店内に一歩踏み込むと、素っ気ない外見からは想像のつかない、ウッディでモダンなインテリア。
無骨な木材と黒く加工された鉄材が、印象的に使われている。
鉄材加工や店内のオブジェをトータルで製作したのは、仲本さんの知人のデザイナーさんなのだそうだ。
食後に出てくるコーヒースタンドも、同じ人の作品だという。
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外光を絞って印象的に取り込んでいる店内は、光の入る部分だけがドラマチックに明るく、モダンな内装とよく合っている。
高級感は前面に出さずに、でもカジュアルに振れないデザイン。
このシャープネスと料理の印象が、よく合っている。
レストランは総合芸術だなあ、と思う瞬間だ。

イタリアンであっても地元の食材のみに必ずしもこだわらず、良い素材なら産地を問わず使う。
産地をうかがっていると地元のものがもちろん多いのだけれど、仲本さんの、品質本位のドライな感覚を感じる。

酸味については、あとでご本人にうかがうと、ご自身でもお好きだとのことなので、
この感想はあながち間違ってはいなかったな、と思った。

酸味は料理の輪郭を、よりシャープにする。
シャープネスをきかせて消す「酸」遣い。
うまいなあ。そのあたりが、仲本さんの料理の特徴であり腕なのかなと思う。

酸味によって、料理全体の目鼻がくっきりつく。それはわかる。
それなのに、仲本さんの料理の最後に印象に残るのは酸味ではなく、不思議と、食材そのものの味なのだ。
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ristorante NAKAMOTO
シェフ;仲本章宏
京都府木津川市木津南垣外122-1
0774-26-5504
http://www.ristorantenakamoto.jp/
水曜休
(ほか不定休あり)